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ひと手間Weblog

メカ好き文系が試みたDIYと乗り物のレストアやモディファイの備忘録

ヤマハTZR125レストア&モディファイ ― 外装編①

TZR125のレストア&モディファイも、いよいよ佳境に入ってきた。今回は前後カウルの補修と塗装までのご紹介だ。メーカークォリティーを掲げている以上、ここでしくじるのは不味い。それにしても塗装下準備の水研ぎは、思いのほか時間の掛かるきつい作業だった。塗装までの道のりは、実に長かった……。


 

 

フロントカウル周り

フロントアッパーカウルは、カラーリング用のシールやステッカーを剥がした状態だ。大きな損傷はなかったので、耐水ペーパーで水研ぎをし、塗装作業に入っていくことにした。バックミラーに関しては、ステー部分は磨いたら綺麗になったが、プラ部分は傷んでいたので軽く水研ぎをし、保護のためにプラサフを噴いておいた。

TZR125入手時のカウル類は、是非とも生かしたい。しかし、現状のままではあまり綺麗とは言えず使う気にはなれなかった。そこで前後カウルの補修を行ってから、塗装とカラーリングを行うことにした。

細身のフロントカウルのアッパー、ロアカウルは、驚いたことにイタリア製でその刻印があった。日本国内で限定販売された前期型TZR125のものだ。カウルをよく確認をすると致命的な欠損はなかったので、大きな補修はせずに済みそうだ。ステッカー類を全て取り除き、一部の箇所をパテで修正を行った。パテが硬化したら塗装下準備の水研ぎだ。水研ぎは耐水ペーパーの400番から始め、800、1200番と掛けていった。フロントカウル上下の水研ぎを行ったのだが、手指、腰にとんでもなく負担が掛かる体力勝負だった。

フロントロアカウルは、上塗りのホワイトが塗り上がり、カラーリング作業待ち。このカウルにはMade in Italyの刻印があった。プラ樹脂なのは間違いないのだが、その素材はよく分からなかった。カウル下部中央に蝶番がある左右別体式のカウルなので、カウルを装着してからメンテなどで片面を外しても、カウル面が地面で擦れてキズが付く心配はない。製品がしっかりとしているせいもあり、割りと重量がある。

水研ぎを終えたら脱脂をし、プラサフで塗装の下地を整えた。プラサフは、SOFT99ボデーペンのホワイトを選択。補修箇所や下地が見えなくなるように満遍なく噴霧していった。プラサフ換装後に軽く水研ぎをし、本塗装を行うことにした。

我がTZR125のカラーを調べてみると、ベースカラーは「シルキーホワイト」で、パールが含まれているものだった。塗色は本来なら「シルキーホワイト」でいくべきなのだが、入手しやすい普通の「ホワイト」で塗装することにした。しかもケイヨーD2で販売されている約200円の激安スプレー塗料だ。その激安スプレー塗料でも、塗り上がってみるとそれほど違和感がなかった。プラサフ仕上げを奇麗にしとけば、素人塗装でもそこそこ見られる仕上がりとなる。といっても玄人はだしには程遠い、近接撮影禁止のレベルではあるのだが……。

TZR250R用と思われるバックミラー。プラ部分を白のプラサフで塗装、艶消し仕上げにしてみた。TZR125のカウルはスリムなので、ステーの短いこのミラーの組み合わせだと、後方視界はあまりよくない。

バックミラーはTZR125純正品ではなく、形状から判断するとTZR250R用のものが取り付けられていた。2ヶ所ある取り付けボルトの間隔が全く異なっていて、カウルステーに新たに穴を開けて取り付けられていた。しかもカウルとミラー基部に隙間ができていた。そこでミラー基部より一回り大きく切り出した平ゴムを、ミラー基部とカウルの間に挟み、隙間の穴を塞ぐようにしている。

バックミラーのプラ部分は、経年劣化で粉を吹いているような状態だったので、ミラー面をマスキングしてプラサフで塗装を行っている。艶ありホワイトの重ね塗りはせずに、あえて艶消しホワイト風のプラサフ仕上げにしてみた。

 

シートカウル

シートカウル補修のため、FRP作業を初めて行ってみた。硬化剤の割合を正確に行えば、意外と面白い作業だった。シート後方下部にある穴をFRP樹脂で埋めてあるが、及第点と言ったところか。

シートカウルは、OXレーシングのFRP製TZR125専用品だ。この個体はレースで使用されていたこともあり、転倒によるガリキズや割れや欠けなど、お世辞にも程度は良くなかった。シートカウルは3ヵ所でフレームに取り付けられるようになっているのだが、転倒によるダメージで、左右2か所の取り付け部分が完全に破損していた。このシートカウルはレース用ということで、軽量化のためガラスマットの積層が薄く取り付け箇所が割れ、砕け散ってしまったようだ。その破損箇所をFRP樹脂で簡単に補修を行い、穴を開けてシートカウルが取り付けられるようになっていた。レース用なので体裁は二の次なのだろう。

シートカウル後方上面角に転倒によるガリキスがあったので、パテ盛りをして補修を行うところ。この他不必要な穴はFRP樹脂で埋め、割れの補修も行っている。穴埋めの際に、クラフトテープの糊面でない方を、剥離紙の代用としてみたら、存外にうまくいった。シート取付穴の欠損した周囲をパテで奇麗な円形にするのは難しく、それなりの仕上がりにしかならなかった。

そのFRP補修箇所をさらに補修するため、アマゾンでFRP補修用キットを購入した。内容はFRP樹脂、ガラスマット、硬化剤、パテなどからなる初心者向け5点セットだ。FRP樹脂には、インパラフィンとノンパラフィンがあり、用途によって使い分けるようだ。初心者が補修用に利用するならば、インパラフィンタイプを選択すれば間違いないようだ。

ノンパラフィンタイプは、樹脂面が硬化してもねっとりとしており、ガラスマットを何層も塗り重ねる用途に適したタイプのようだ。一方インパラフィンタイプは、FRP樹脂表面が完全硬化すると、そこへは積層することができなくなるのが特徴だ。ただし、硬化してしまった表面をヤスリなどで一皮剥けば、再度FRP樹脂を塗り重ねることが可能になるので、覚えておくとよいだろう。

シート取り付け用に凸型の金属製カラーを埋め込んだ。この後パテで周囲をもう少し整え、凹んだところにFRP樹脂を若干流し込んで平滑にしてみた。

完全硬化後にFRP樹脂を塗り重ねることが必要になり、FRP樹脂が硬化した表面をヤスリで一皮剥き、FRP樹脂とガラスマットで塗り重ねを行ったところ、問題なく下層の樹脂と上層の樹脂が硬化して積層が行えた。具体的には、補修部分にさらにFRP樹脂とガラスマットを塗り重ね、穴を開けてシートカウルをフレームに取り付けるようにした。しかし、これだとFRPに厚みが増しただけなので、以前と大して変わらずにしっくりこなかった。そこで凸型の金属製カラーを3ヵ所のシート取り付け部分に埋めることにしてみた。この一連の作業で、硬化後の積層が可能となることを経験できたのだ。

凸型の金属製カラーは、ガラスマット2枚敷いてFRP樹脂で固定した。硬化後にディスクグラインダーで軽く平面化し、取り付け用の穴はドリルでさらっておいた。

FRP作業を上手く行うには、初心者ながらも分かったことがある。FRP樹脂と硬化剤の割合を正確に行うことが秘訣。実は当たり前のことなのだが、適当に目分量で硬化剤をFRP樹脂に投入しては決して上手くいくことはないのだ。

硬化剤が多い場合は、FRP樹脂と硬化剤を撹拌している間際から硬化していくのが分かるぐらいだ。それこそ敷いてあるガラスマットに、FRP樹脂が浸透する前に硬化していってしまうのだ。浸透どころか作業を中断せざるを得ない状況になってしまった。それぐらい硬化が速かった。さらに発熱がすごい。火傷するんでは、と思うぐらい熱くなっていた。化学変化恐るべしである。

シートカウル前方に1ヵ所ある、取り付け用の穴にも凸型の金属製カラーを埋め込んだ。裏側ということもあり、仕上げは荒いが機能、強度的には全く問題がない。

逆に硬化剤が少ないと、硬化時間がやたらと長くなる。そこへ硬化剤を継ぎ足しても望むような硬化状態になるとは限らない。繰り返しになるが、FRP樹脂と硬化剤の割合は重要だった。さらに言えば、季節によっても硬化剤の割合が変わるという。FRP作業に関しては、FRP樹脂と硬化剤の正確な割合が、FRP作業を上手く行う早道だということが改めて分かったのだ。それさえ守れば、FRP作業は結構面白かった。ただし、ガラスマットの繊維で、肌がチクチクするのを除けばだ。

ーつづくー